医療法人社団 正鵠会

四街道メンタルクリニック

最近の日本の政治状況について


  近頃会社の倒産だの金融不安だの政党の離合集散など世情が騒がしい。

  ついこのあいだまで、「国の赤字を解消しないと日本がダメになるから増税を含めた国民負担増は我慢しましょう」と「欲しがりません勝つまでは」の焼き直しのようなスローガンを繰り返していた人々が、手のひらを返したように減税・景気対策の優先を説いている。前言を翻すなら、きちんとなぜ翻すのかを説明するべきだし、先の読めなかった不明を恥じるべきである。つい半年前まで言っていたことについて全く責任をとらぬままに違ったことを言い出す人を信用するわけにはいかない。ましてや国政を請託するわけにはいかない。ビデオテープというものがあるのだから、マスコミ諸氏はどの政治家、どの評論家、そしてどのニュースキャスターたちが変節したのか、先が読めなかったのかを検証する特集でもやればよい。

 日本のマスコミの、政治家に対する評価はきわめて低い。このような混迷の時期において、肝心の政策や政見についても、国会議員の離合集散や政党の勢力地図といった低次元のレベルでしか観ようとせず、また、そのような低次元の見方をすることで政治家を見下し、自分がいかにも政治通のような印象を与えることしか頭にないような人々がテレビで得意げにしゃべるのを観るのは不幸なことである。

 日本人には自分の意見を明確に表現することが下手な人が多い。そして「総意をまとめ」たりあらかじめ根回しして意見を集約したりすることが好きである。意見の対立が表面化したりする事を好まない。喧嘩が下手で自信がない。いつも周りを見ながら自分だけがはずれたりしないように周囲に合わせることを小さい頃から教えられている。それは美点であると同時に大きな欠陥でもある。

 国が大きな変革期にあって、しかも混迷を深めているときに、我々が一番警戒しなければならないのはファシズムの台頭である。根回し・談合・群れて行動する事に慣れきっている日本人的体質は、ムードや誘導に大変流されやすいのでなおさら警戒せねばならない。その上、マスコミにも自分の立場や視点を明確にして報道するという姿勢が欠けている。テレビや週刊誌・新聞などは無責任で表面的かつ一般受けしそうなコメントをあたかも国民の意見を代表しているかのような思い上がりをもって垂れ流している。テレビで記者やキャスターが「国民は」などと簡単に発言するのをきくと虫酸が走る。私も日本国民だが「少なくとも俺はおまえに代弁を頼んだ覚えはない」とテレビに向かってどくづいたりする。

 私は小沢一郎という政治家が好きである。会ったこともないので本当はどういう人なのか知らない。彼の示す政策には必ずしも賛成できない点もある。それでも、自分の立場や視点を明確にして自分のやりたいこと、目標などをきちんと示し続けている姿勢を評価するからである。マスコミはこぞってこの人を「剛腕」だの「壊し屋」だの「専制君主」だのと形容し、この人がリーダーになったら独裁政治が出現するかのように言ってるが、少なくとも私には根拠のない中傷としか思えない。議会制民主主義を貫き通そうとする意志を感ずることができるし、どこかの政党のように政権をうかがうために政策をころころ変更したりしない誠実さはもっと高く評価されて良いと思う。彼が日本人好みの根回し・談合・裏取引体質をあまり持ち合わせていないことが、今までのやり方にどっぷり浸かった人たちには「専制君主的」に見えるだけなのではないかと思うのである。

 いずれにしても、これまでの日本を支えてきた、談合・根回し・護送船団方式による官僚の支配構造は破綻したのであって、これまで慣れ親しんできた「やり方」は通用しなくなるのである。これは大変に恐ろしいことであって、今までのやり方が通用せずに、それに代わるやり方が示されないとしたらえらいことである。だからといって「元に戻そうよ」といって戻れる道ではないし「やっぱりお上に決めてもらおう」というのでは先は無い。旧い体制に慣れきって事の本質など見ようともしない、どのメディアも、どのチャンネルも同じ様な論調のマスコミの誘導に乗って間違った選択を繰り返さぬように、我々自身が将来を賭けるに足る方向性と政策とを見極める力を持たねばならない。

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